「食料品の消費税0%」は本当に物価高対策なのか?

参院選を控え、各党が減税を公約に掲げています。これは庶民にとっては歓迎したいところですが、すでに今年度予算が成立しているので、仮に実施が決まっても早くて年末の補正予算か、来年度予算での実施になると思われます。今、何とかしてほしいのに遅すぎませんか?といいたいところですが、この物価高の中、せめて食料品くらい税金取るなよ、と思う人もおられると思います。「食料品だけ消費税0%」で本当に食料品の値段が8%下がるのでしょうか?

湖東京至氏(元静岡大学教授、 税理士)監修・ 税ジャナイカ実行委員会/ インボイス問題を考えるフォーラム作成の「インボイスを肯定する食品の消費税率0%の問題点」から、効果を探ってみたいと思います。

食品を0%にしても、 8%分、 物価が下がることは絶対にない

「食品を0%にしても、 8%分、 物価が下がることは絶対にない」それはなぜでしょうか?少しずつ紐解いていきましょう。

 消費税法上、消費税の納税義務者は事業者であり、消費者ではありません。 消費税は付加価値 (粗利)に課せられる税金です。
(まず、消費税の「納税義務者」は私たち「消費者」ではなく「事業者」というのが驚きです。「消費者がお店に消費税を預けている」という認識から改めなければなりません。ヨーロッパでは「付加価値税」と呼ばれる税が日本の「消費税」にあたります。)

 また、事業者には価格への転嫁義務はありません。 食品 0%とはキャベツ 648円が600円になることではなく、 販売事業者の納税額が0%になるということで、 減税の効果は物価引き下げではなく事業者の負担減です。
(だとすると、買い物の際に受け取るレシートに表示されている8%・10%は何なのでしょうか?何のための表示なのでしょうか)

 物価高と景気低迷が続く日本において、特に価格変動の激しい食品の消費税率を0%にしても、すべての事業者が8%分を価格に反映させることはありません。
(確かにコストを価格に転嫁できずにいるお店があります。)

 単一税率を採用するニュージーランド政府は 「食料品を非課税にしても負担構造に大きな変化はなく、 税収が減るだけ」と結論づけ、複数税率を導入していません。 つまり、期待するような物価の引き下げ効果は見込めません。

消費税法を見てみると、私たちが思い込んでいた「消費税」とはかなり違う姿です。そのため、私たちが期待する効果を得る制度設計になっていないようです。

「食料品だけ消費税0%」を始め、私たちが納めることになっている「税負担」について、7月の参議院選挙に向けてよく考える必要があります。