食料品の消費税0%の問題点

「食料品の消費税を0%」にすると何かデメリットがあるの?そう思う方もいると思います。

今回も、湖東京至氏(元静岡大学教授、 税理士)監修・ 税ジャナイカ実行委員会/ インボイス問題を考えるフォーラム作成の「インボイスを肯定する食品の消費税率0%の問題点」を、読みながら考えてみたいと思います。

仕入れた食材に仕入税額控除が適用されなくなる飲食店には増税になります。

(税負担増で閉店してしまうお店が出てくるのではないでしょうか)

食品 0%はスーパー等では還付金が発生する可能性がある一方、 そこから仕入れを行う外食産業などにとっては仕入税額控除ができなくなるため、 税負担増となります。

(計算上、(受け取った消費税)―(支払った消費税)=納税額となるため、支払った消費税が減り納税額が増える。飲食店の消費税はテイクアウト以外は10%です。)

また、 異なる業界間で不公平感を生みます。

(消費税率が低いと事業者の税負担も低く、消費税率が高いと事業者の税負担が高くなるためです。消費税は事業者にとって負担の大きい税であり、数ある税金の中で滞納が一番多い税と言われています。)

 

税率が増えるため、インボイス制度の固定化につながります。

政府が説明するインボイス制度の導入目的は「複数税率のもと適正な課税を確保するため」 です。 しかし、制度導入前の4年間、 標準税率 10% 軽減税率 8%の税務処理は帳簿保存方式で問題がありませんでした。 10%8%を残したまま食品 0%を実施すると税率が増えるため、導入目的の意義が強まり、 多くの問題を抱えた日本型インボイス制度の固定化につながります。 また、この制度の問題点の一つである税務コストがさらに増大します。

(インボイス制度は一般消費者には関係がない制度と思われがちですが、実質的には消費税の増税です。制度開始前は免税されていた分の税コストを、価格に転嫁するか、自分で負担するか、取引先に負担してもらうかという問題が発生するためです。巡り巡って物価が上がります。)

 

癒着の温床 政争の具となる懸念

食品 0%を導入しているイギリスでは、 どの品目を0%にするのかをめぐって長年議論が続いています。(ケーキなのか、ビスケットなのか?で10年以上裁判を行なっている例もあるそうです。) 日本でも軽減税率が導入される際、 新聞業界による陳情運動(ロビーイング)が展開されました。 新たに軽減税率を設けると、 事業者団体による陳情運動が起こり、 特定業界と政治家との癒着の土壌(裏金の温床ですね)を生みます。 こうした現象は複数の税率を持つ欧州で報告され、 ドイツ連邦財務省学術顧問団のマインツ大学ベフェコーフェン元教授は、「軽減税率は特定分野、 特定企業に対する補助金となり、市場競争上、 企業間に不公平を招いている」と指摘。(イギリスでも「複数税率は失敗だった」というレポートが10年以上前に出されています) 食品 0%は複数税率の拡大であり、政治と特定分野 企業との癒着の温床、政争の具になることが必至です。

 

軽減税率の新設は標準税率引き上げの呼び水となる

欧州では、 軽減税率を設けるたびに、税収減と税務執行コストの増加を穴埋めすることを理由に標準税率を上げてきました。欧州の標準税率が高い理由は軽減税率の導入が一因となっています。

(食料品の消費税を0%にした際の税の減収の穴埋めに、他の税率が上がるかもしれません)

 

「食料品だけ消費税0%」は、物価高対策にしては効果が薄く、多くの問題点があることが浮き彫りになりました。

暮らしの助けになりそうな公約にこのような問題点が潜んでいるとは思いもよらないことかもしれませんが、少し深掘りすると見えてくることもあります。忙しい毎日ですが、少しだけでも政治に注目することは私たちの生活をまもることにつながるのではないでしょうか。(T.K)